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【③】活版印刷を説明するカードを活版印刷で作る

レポート活版印刷

~前回まで~
【①】 【②】

今回は刷っていく様子です。

先日買った「特ケント9」を使うことにしました。
感想としては、厚み・ハリがあって高級感はありますが、表面がつるっとしているので若干インクを弾く感じ。すぐ紙を重ねるとインクが移りました。
扱いが難しかったです。

印刷機

私が上原さんから譲って頂いたのは、自動フート機です。自動といいながらも、紙の供給は手で行います。
「フート」は「foot」から来ているとかなんとか。そうなんですか?

右足でブレーキを踏みながら紙を差し込んでいきます。
いつでもブレーキを踏めるように足を掛けているので、左に重心が傾く癖がつかないように気をつけています。
台についたネジを締めたり緩めたりして台の傾きを変え、圧を変えます。

手前に紙を設置し、奥に版を差し込みます。
この機械、譲り受けた時から明らかに壊れているところと私が扱いがまだ分かっていない時に一部壊しました。それでも動いているので、それもまたこの機械の癖みたいなものか…と思いながら使っています。
元々上原さんの手元に来た時から中古だったらしいです。
未だになぜネジを回したら台の傾きが変わるのか、またどういう仕組みで動いているのか分かっていません。

ただ、手を挟んだらおしまいだなと思いながら気をつけて使っています。刷り始める前は緊張します。

枠の真ん中あたりに版を置いて、活字がずり上がって来ないように気をつけてジャッキで留めます。3キロ弱あります。そもそも枠が重いんですよね。
足に落としたり指を挟むと危険なのでこれもまた気をつけるポイントです。

ムラ取り

印刷の際、ムラが出ることがあります。ある文字だけが欠けて印刷される。ある部分だけがつぶれて印刷される等。

考えられる原因は
版を留める際に、活字がずり上がってしまっている
活字が摩耗して、高さが変わってしまっている
年代または活字鋳造所が違う活字が混ざっていて、元々高さが違う

については、上原さんから昔は手元にない活字は近所の印刷所から借りてきていたと言う話は聞いているのであるかなと思います。1本借りたら、2本返していたそうです。ちなみにサイズによりますが活字は5本セットが基本です。
母型の制作者によって微妙にフォントというか文字が違うので高さが違うということも考えられます。

どうしても出ない文字がある場合は、ウラからマスキングテープを私は貼っています。上の写真は新6号の「っ」が出なくてその部分のみに貼っています。
本当は和紙を貼るらしいのですが、まあマスキングテープも和紙だし。
一枚貼るだけで違うので本当に微妙なものみたいです。もしかしたらマスキングすら厚すぎるのかもしれない…習字紙等での実験が必要かもしれません。

試し刷り①

ある程度までは、レイアウトのみを確認して修正点を探します。

①「←ウラ」の位置が下すぎる →コミを調整して上へ移動させる
②「活版印刷」「とは」の間が開きすぎている →9pの2倍を1つに変える
③「←」「ウラ」の間が開きすぎている →5倍の2分、2つに変える

試し刷り②

最後の1行と「←ウラ」の行間がつまってますね。

5号2分のインテル1枚を「活版印刷とは」の後ろにから「←ウラ」の前に移動させてみたところです。

版を機械から何度も取り外し、コミやインテルを入れ替えながら理想の形を探します。
版を組んでいる段階でもっとこの辺りの勘が働くようになれば、もう少し時間短縮ができそうです。それが技術なのだと思います。

試し刷り③

レイアウトが決まったら、紙のどこに印刷するのか、また紙の水平が取れているかを確認しながら試し刷りを繰り返します。

写真は、上下の余白のバランスをどちらにしようか悩んでいるところです。左の方が、上の余白が広めです。
現代感のある右とも悩んだのですが、レトロ感のある左がやはり活版印刷っぽいなと思います。大きな違いはなく、自己満足に近いのかもしれません。
でも、このセンスが腕の見せ所だって上原さんは言ってました!

本印刷

その他調整を済ませ、このまま印刷できると確信したら本印刷を始めます。
ちなみにここまで使った時間は1時間半~2時間ほど。1年前は半日ほど掛かっていたのでだいぶ成長しました!
100枚ほどを印刷するのは、だいたい40分。初めての紙で手間取った+扱いにくかったのもあって時間が掛かってしまいました。

叔母が印刷した紙を並べてくれました!ありがたい!
一人でやっている時は機械を止めて並べて枚数を確認するというアクションを挟むのが大変だったので、最近は人の手を借りることを覚えました。

乾燥は3日を目安にしています。天候等の兼ね合いもあります。

完成

「な」や「す」が少し潰れていたり、文字ごとにムラがある…。まだまだ先は長そうです。

時間が経つと、一ヶ月、または数ヶ月後、インクが完全に乾き固まったら印象が変わるので、それもいずれまとめられたらと思っています。
オモテ面はこれで完成です。次回はウラ面に入ります。

(つづく)

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書いた人:坂本真理

坂本真理

宮崎県延岡市生まれ。宮崎県立延岡西高等学校卒業後、京都市立芸術大学美術学部工芸科で染織を専攻し中退。2014年に帰郷。延岡市を中心に地域を深く考えたデザインを行う。延岡バックステージ、代表。

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