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故人への想いとともに前進するミュージカル

影山雄成のバックステージ・ファイル

2週間後の9月14日は、日本でもお馴染みの『ライオンキング』など知名度の高いミュージカル4作品が一斉に上演を再開した日。
実際には、その3カ月前の6月下旬からコンサートやストレートプレイ(芝居)など、ミュージカル以外のジャンルの作品が劇場街で順番に公演を開始していたにもかかわらず、この日があたかもブロードウェイの再開初日であるかのように報じるメディアも続出した。

しかし、こうした報道が一斉に行われたことで、世間にブロードウェイ再開を強く印象付け、知らしめることに成功したのだ。
ミュージカル『ライオンキング』の劇場前には日本での知名度が高いからか、日系のメディアが目立った。
一方、アメリカの歴史を描くミュージカル『ハミルトン』や、米国内で絶大な人気を誇る『ウィキッド』の劇場前には現地のメディアが揃い、再開を大きく取り上げる。

『CHICAGO』
Photo:Julieta Cervantes

この日、上演を再開した4作品のミュージカルの中で演劇界にとって特にうれしいニュースとなったのは、ブロードウェイで歴代ロングラン記録第2位の『シカゴ』の復活。

禁酒法が施行されていた1920年代のシカゴで繰り広げられる大人の舞台だ。

最大の見どころは、振り付け。
斬新な動きが特徴の振り付けが評価され、アメリカ演劇界で最高峰のトニー賞に輝いた女性振付師は、パンデミック中の昨年末に急死していた。

それを踏まえ、開演前のステージには演出家がマイクを手に登場。
亡くなった女性振付師との『シカゴ』を通した25年超の想い出を披露し、彼女の功績を称えていく。
そして頭を下げてその名を呼び、上を見上げ、「今晩、あなたがどこにいても、あなたはこのステージ上に存在している」と締めくくり、再開初日の公演が始まった。

Photo:Julieta Cervantes

一昨年12月の死去から間もなく、パンデミック中であったにもかかわらず、急ピッチで追悼ドキュメンタリー映画まで制作された大御所を偲び、観客と出演者が一体となっていったのだ。

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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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延岡バックステージ
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