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演劇界を支えるウーマンパワー

影山雄成のバックステージ・ファイル

女性客から圧倒的な支持を得る同種の作品が、オフ・ブロードウェイで上演されたシンガーソングライターのメリッサ・エスリッジによる『マイ・ウィンドウ』。
ロック歌手としても知られる現在61歳の彼女が、次々とヒット曲を歌いながら、自身の人生を振り返るステージだ。

『My Window–A Journey Through Life』
Photo:Jenny Anderson

グラミー賞やアカデミー賞にも輝いてきたヒットメーカーが生まれた瞬間に始まり、歌手としてデビューし名声を高め、同性愛者であることを公にし、さらには乳がんと闘いながら歩み続けてきた過去を語り尽くす。
レズビアンの元妻との間に迎えた養子の息子が、パンデミック中の2020年に21歳の若さで薬物中毒により亡くなり、その責任を追及されたことなども赤裸々に告白していく。

Photo:Jenny Anderson

政治的な活動に熱心なことも彼女の強みで、多方面での活躍が目覚ましい才能の持ち主として、多くの女性ファンを劇場へと呼び寄せた。
3時間超に及ぶステージに臨む彼女の勇気が、大勢の熱狂的な女性客を魅了し感動を与えたのだ。

ここ数年の間に、ニューヨークの劇場で配布されるプログラムにある変化が見られるようになった。
それは、関係者のプロフィル欄の氏名の後に、ジェンダー代名詞を挿入するという試み。
男性を意味する“(he/him)”や、女性を指す“(she/her)”など、各々が認識する性別を示す代名詞を加えるのだ。
そして、同性愛者などの性的マイノリティへの理解が深まり、“LGBTQ+”が広く認識されると、さらなる変化が表れる。男性と女性のどちらにも分類されないノンバイナリーな“(they/them)”を目にする機会が多くなった。

“LGBTQ”に“+”を添えるのが当たり前となったように、76種の性別があるといわれて久しく、今後はこれらのジェンダー代名詞がさらに多種多様になると考えられている。
このように、性別は今のアメリカ社会の大きな関心事のひとつで、ニューヨーク演劇界において女性に焦点を当てる傾向は必然だったのかもしれない。

『& Juliet』Photo:Matthew Murphy

ブロードウェイの観客の68%が女性という調査結果がある。
また、たとえ男女のカップル客であっても、観劇する演目の選択を女性側がする可能性が高いというデータも明らかになった。
演劇界で羽ばたく彼女たちによるウーマンパワーの台頭は、時世の動きを反映したもので、且つビジネス面でも理に適ったことのようだ。

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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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延岡バックステージ
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